適性検査の信憑性についてご存知ですか?
- さくら総合研究所

- 10月27日
- 読了時間: 5分

はじめに
近年、多くの企業が採用や人材育成の場面で適性検査を活用しています。しかし、「当たっている」「当たっていない」といった感覚的な評価で終わってしまうケースも少なくありません。本来、適性検査は人の可能性を引き出すための“科学的なツール”です。今回は、適性検査の信憑性(信頼の根拠)について、より深く掘り下げて整理してみます。
1.適性検査の開発には「臨床試験」の発想が必要
適性検査は、薬の開発と似ています。
薬が市場に出るまでには「臨床試験」によって効果や副作用を検証し、妥当性を確認します。適性検査は命に関わることではないので薬の開発レベルではありませんが、考え方は
同じです。
どんな特性を測れるのか、測定結果に意味はあるのか、業務パフォーマンスと関連するのかといった点について、一定数以上のデータに基づいた検証が不可欠です。この点を理解しているかどうかが、信頼できる検査を見極める重要なポイントになります。
2. 問題を作るのは簡単。しかし難しいのは「相関の証明」
極端な話、適性検査の“質問”自体を作ることはそれほど難しくありません。
興味や性格を尋ねる質問を並べるだけであれば数日で完成します。
それこそ、生成AIに依頼すれば10分程度でそれらしいものができるかもしれません。
例えば、それを元にアプリを開発すれば、見せ方によってはそれなりの適性検査に見えるかもしれません。しかし、回答パターンと個人特性に本当に関係があるのか、言動・行動傾向や職業適性と結びつくのか、ここを明らかにするためには、統計的な検証が必要です。
つまり、「つくること」より「検証すること」の方が、圧倒的に高度な技術を必要とします。
3. 統計としては“相当数”のデータが必要
検査結果に信頼性を持たせるには、多様な年齢層・属性の受検者データが必要です。
数百名程度の検証では、偶然による偏差やバイアスが含まれる可能性が高く、
数千~数万規模のデータが理想的です。
また、年次ごとの傾向変動もあるため、継続的なデータ収集を行うことが理想です。
4. 心理学の理論がなければ「ただの性格診断」
性格分類だけを行う検査は、一見面白い読み物のように感じられます。
しかし、「予測妥当性」(その人が将来どう活躍するか)を考えるのであれば、心理学や
統計学の理論的背景が不可欠です。その要素が欠けている検査は、企業の採用判定や
人材育成に使うには少し弱いといえます。
5. 「当たっている・当たっていない」で終わらせるのはもったいない
適性検査の目的は、受検者の可能性を最大限に引き出すことです。
単なる“占い”のように「当たっていた」「違っていた」という感想で終わらせると、貴重なデータを活かしきれません。特に、「当たっている」と思われる項目がポジティブなものであれば、無意識にその検査が信頼に値すると考えてしまう傾向にあります。
検査結果を良い悪いと判断するのではなく、結果から、人材の強み・弱み・動機付けポイントを読み取り、育成のヒントにつなげることが大切です。
6. 誤解されやすい適性検査の扱い
「検査結果の数値が高いから優秀」「数値が低いから不採用」という扱いは誤った運用です。適性検査は、学校のテストとは違い、個人を“評価する”ものではなく、“理解する”ための材料です。本来、実技試験や面接と組み合わせて、総合的に判断するべきツールです。
7. エナジャイザーのEVAは3,000名×3年の追跡分析
適性診断「エナジャイザー」では、3つの評価軸の一つに対象評価価値観(EVA)という
独自指標を設定しています。この指標は、有形・無形を含む30項目について、3,000名以上を対象に、3年間の追跡調査と解析を実施。その結果、統計的に意味がある7つの要因が抽出されました。このような大規模データに基づく設計は、信頼できる検査の代表的な特徴といえます。
8. エナジャイザーが現場で支持される理由
エナジャイザーが企業で評価されている理由は、単なる性格分類に終わらず、「どのような育成が向くのか」「どの環境で活躍しやすいのか」など、実務に役立つ情報まで提示する点にあります。
育成・配置・フォローアップに使いやすいことは、人事現場において大きな価値を持ちます。また、解説や育成相談は、カウンセラー資格等を有している心理分野のプロがサポートしますので、安心して利用できるという声を多数頂戴しています。
9. 人材育成につなげる活用法
適性検査の結果は、面談のトピックとしても活用できます。例えば、モチベーションの源泉やストレス要因が分かれば、個々の従業員に合わせたマネジメントが可能になります。
また、早期離職防止やエンゲージメント向上にも応用できます。
【検査データが企業に与えるメリット】
企業側には、適性検査を通じて以下のメリットが生まれます。
●採用のミスマッチを減らせる
●育成の方向性が明確になる
●管理職のマネジメント精度が向上する
●離職リスクを早期に察知できる など
科学的根拠に基づくデータは、企業の人材戦略において非常に強力な武器となります。
【使用する検査の“妥当性”を確認する視点】
適性検査を選ぶ際には、以下の点にも注目してみましょう。
●開発過程に統計検証があるか
●追跡研究が行われているか
●心理学的理論に基づいているか
●育成・配置に使える情報が含まれているか など
10. まとめ
人材は企業の未来をつくる最も重要な資産です。その人の可能性を見極め、適切に育てるための道具として、適性検査は今後ますます重要性を増していくでしょう。
ぜひ一度、「適性検査の信憑性」という観点から、ご使用中の検査を見直してみては
いかがでしょうか。
【著者情報】
株式会社さくら総合研究所 シニアディレクター 菅野敏
資格:シニアコンサルタント ・キャリアコンサルタント
大手損害保険会社の営業職から中小企業へ転職。創業期のNO.2として組織創りに取り組み、自社および他社の人財育成の支援を担当。その経験を活かし、人がポテンシャルを発揮しイキイキと働ける環境創りの支援を使命とするため現職へ。
現在は、エナジャイザーのプロファイラーとして約15万人以上のデータを解析している。